2022年11月29日

牽引力測定車の問題点

牽引力測定車をKKC集会に持って行ったところ、いくつか指摘を受けました。
それをご紹介します。

・負荷測定用センサを取付けているアルミアングルの剛性が足りないのではないか。
市販のニュートンメータ(負荷測定器)の中にも本牽引力測定車と同じようなセンサが入っていますが、それを支える金具はずっと剛性のあるものが使用されています。
1/80クラスの車輛では、せいぜい牽引力は100gf程度なので、そこそこの剛性があれば良いという判断で加工性を優先し、厚さ1.5mmのアルミアングルを使用しています。
車体自体も木製ですので、さほど剛性は無いと思われます。
センサ自体は100gf測定用のものを使用しています。(信憑性はともかく、300gf程度までは計測できます)
もっと剛性を上げるべきなのか悩むところです。

・センサの出力の直線性に問題は無いのか。
センサは金属の歪みを検出し、力に換算しています。
今回のものは具体的には牽引力測定車を連結器を下にして負荷の無い時と50gの錘をぶら下げた時を測定して校正し、その間の値はセンサから伝わる電圧が直線的に変化するものとして計測しています。
牽引力測定車を水平に置いて、電源を入れると負荷0ということでゼロリセットするようにしてあります。
複数点で校正しているわけではありませんので、中間値のデータの信憑性は評価できていません。(デジタル秤に使用されるセンサですのである程度信用し、20gの錘で確認してもそれらしい値は取れているようですし、そこまでしていないと言うのが実情です)

・出発抵抗測定がうまく測定できない。
今回、KKC集会で16.5mmの牽引負荷を測定させていただく際に、急遽、列車の出発抵抗を測定したいと希望されました。
これまで、走り出してからの列車の負荷しか眼中になかったので、出発抵抗を測定したことはありませんでした。
単に列車を引っ張り出すと、連結器の隙間等のため、徐々に負荷が増えていくと思われ、出発時に負荷が大きくなるというのを捉えることは難しく、牽引している貨車を引っ張った状態で連結器の隙間が無くなるようにしてから機関車を出発させると出発抵抗らしきものが測定できたようでした。
ただ、出発後すぐに停止したりして、列車から押されるような形になり、負の負荷も計測されてしまったようです。
現地での慌ただしい中での想定外の計測は難しいものがあります。

ご指摘いただいたのは、今回のプログラムでは0.1秒に1回測定値をPCに送り、0.3秒に1回車輛のディスプレイ表示を更新していることで、測定周期が長く、出発抵抗測定を捉え切れていないのではないかということでした。
そこで、今回の回路で1秒間に320回測定できるのなら、1/320秒に1回計測し、マイコンのメモリに貯めておいて測定終了でデータを送ればどうかというご提案をいただきました。
センサの出力電圧は非常に小さくノイズの影響か、たまに変な値が出るので、今回のプログラムでは、20回データを取得して上位と下位それぞれ5個を破棄し、中間の10個のデータの平均値を測定データとしています。
データ取得後の後処理を楽にしたいためなのですが、そういったことは後処理でやれば良いとのご指摘でした。
今回のデータでも3000以上あるので、数十万個のデータとなるとPCの能力が向上しているとは言えちょっと気が引けます。

その他、この牽引力測定車は線路の勾配も測定できるのですが、加速度センサからの情報を計算しているせいか、走行中の傾きのデータは信頼性に乏しいという問題点も抱えています。

まだまだ不完全ではありますが、徐々に改善しながら色々な条件でデータの取得を積み重ねていきたいと思います。
posted by よしひろ at 21:55| Comment(13) | TrackBack(0) | 電子工作

2022年10月27日

PWMコントローラ

以前にも書きましたが、私の持っているPWM制御のコントローラでは、私の機関車はうまく制御できません。
理由は、PWMの制御が出力段のトランジスタのONとOFFで行われているためです。
トランジスタのONの期間は最高電圧が与えられていますが、OFFの期間ではモータの逆起電圧が発生し、結果的に本来0Vであるべきところからかけ離れた電圧となってしまっているためです。
モータの回転数は、入力の電圧に比例するため、0Vであるべきところが高い電圧になっていると平均電圧が上昇し、それに比例して回転数が上がります。
但し、モータのトルクは、入力の電流に比例するので、OFF期間での電流は0Aですのでトルクは発生しません。負荷が重い場合は出力トルク0の期間で回転数は落ちると考えられます。
PWMを少しONにしただけでモータが高速回転する現象は、コアレスモータで顕著に発生します。
コア付のモータではOFF期間での逆起電圧が低く、影響少ないため、多くの鉄道模型ではこれで充分制御できていることが多いと思われます。
私の場合、コアレスモータを使っていることが多いのでPWM制御のコントローラは使えませんでした。
しかしながら、PWMでもONーOFF-ONの制御では無く、ONーショート(0V)-ONの制御であればコアレスモータでも問題なく回転数を制御できるはずです。
このような制御を行えるDCモータドライバが市販されていますので、これを用いてPWM制御のコントローラを作ってみました。
コントローラ.jpg
作製したPWM制御のコントローラの外観です。
タカチ電機工業製のW80×H30×D50の大きさのアルミケースに入れてあります。
左に電圧計、右に電流計を取付けてあります。
PWMなのでデジタル計測器は計測時点の電圧/電流を表示するのではないかと懸念がありましたが、どうも平均値を表示しているみたいです。
中身.jpg
中身です。
自作するのは面倒なので、できる限り市販品を使用しています。
配線がごちゃごちゃしていますが、右の緑の基板は市販のPWMコントローラです。(中国製で一個数百円で売られています)
このコントローラはPWM信号を得るために使用しており、PWMの出力は使用していません。
このコントローラのPWM周波数は実測で約30kHzとなっていました。
左の緑の基板は、秋月電子通商で販売されているTB6612使用 Dual DCモータードライブキット[AE-TB6612]です。
このTB6612というICは前記のON-ショート(0V)-ONで動いてくれます。
ただ、PWMの信号を外部から与える必要があるので、右側のPWMコントローラからPWM信号を拝借している次第です。

波形.jpg
これの出力をオシロスコープで見た波形です。
逆起電圧の影響はほぼなく、割と綺麗な波形となっています。
実際にコアレスモータを回してみても他のPWMコントローラのように、ちょっとノブを回しただけで高速回転するようなことはなく、ノブの回転にほぼ比例して回転数が上がりました。
これなら、模型の運転に使えそうです。
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2022年06月09日

牽引力測定車作製4

12mm、16.5mmゲージ用の牽引力測定車ができました。
牽引力測定車4.jpgゲージは異なりますが、計測する内容は変わらず、多少のスケール違いにも依存しないので、台車回り以外はほぼ同じものです。
12mm用は全長は連結器間約22cmで、20m級の1/87より少し短いです。
16.5mm用は台車を避けるためにロードセルを少しずらしてある関係等で5mmほど長くなっています。
連結器はIMONカプラーを使用しています。
電源は単4電池2個直列にしてそのまま供給しています。
当初は5Vに昇圧してUSB経由とか、電池3本で3.3Vに減圧しての電源供給を考えていたのですが、ベースボードの電圧仕様を見ると、3.3V電源の許容範囲が3.0〜3.6Vと少し大きく、電池も(新品では)電圧が1.5Vよりも若干高そうなので、そのまま使うことにしました。
電池ボックスは、ON-OFFスイッチの付いたものを使用しています。
ベースボードには充電可能なリチウムイオンポリマー電池の端子がありますので、乾電池が消耗した際の予備としてこれが使えます。
タグ:測定 牽引力
posted by よしひろ at 09:52| Comment(1) | TrackBack(0) | 電子工作

2022年06月08日

牽引力測定車作製3

とりあえず、16.5mm用の牽引力測定車を組み立てました。

牽引力測定車2.jpg
写真の上側に写っているのはこれまで使用していた12mmゲージの牽引力測定車(無線関係は取り外してあります)、下が今回作製した16.5mmゲージ用の牽引力測定車です。
かなり小型化することができました。
電池を含めた重量は122gです。
これまでのものは無線関係を含めて634gですので、かなりの軽量化です。
今回のものは、牽引力測定車の勾配も測定できるようにしています。
車輛での表示と共にBluetoothにて測定データを送るようにしてあります。(Wifiで端末に測定値を表示するのは面倒だったので実装していません)
牽引力の測定は、無負荷時と50g負荷時を計測してロードセルの校正ができるようにし、リセットした時が0gfということにしてあります。
勾配の方は、ソフトウェアでの校正方法が分からなかったので、物理的に校正してあります。
勾配を測定する加速度/ジャイロセンサセンサの基板の取り付けねじの締め付けをほんの少し変えるだけで勾配の測定値が変わるので、経年変化が心配です。
牽引力測定車の向きを逆にしてもほぼ同じ傾きと測定されるように調整していますが、0.1%の桁は怪しいかもしれません。
これの輪軸を入れ替えれば13mmゲージにも対応できます。
牽引力測定車3.jpg

今回の回路は、極力市販品を利用し、半田付けは床下にある電池ボックスとベースボードとの配線用のコネクタのみです。
ほぼ全てSparkFun社製のボードを使用しており、ベースボードは「SparkFun Thing Plus - ESP32 WROOM (Micro-B) 」というものです。
ソフトウェアもできる限り公開されているライブラリを使用しており、自分で作ったロジックのようなものはあまりありません。
今回作製したスケッチ(ソースプログラム)を添付しておきます。(動作保証はしません)
タグ:測定 牽引力
posted by よしひろ at 13:57| Comment(1) | TrackBack(0) | 電子工作

2022年06月03日

PWM制御

鉄道模型の速度制御にPWMが使われることが多いのですが、私の持っているPWM制御のコントローラでは、私の機関車はうまく制御できません。
ノッチを少し回すと、ほぼ最高速度になってしまいます。
ゆうえんさんのblogに綺麗なPWMの波形が掲載されているのですが、私の持っているPWM制御のコントローラでも確認してみました。
結論としては、以前からの私の推定通りの結果で、コアレスモータを使用しているとPWMのONとOFF時の電圧の差がほとんど無く、ほんの少しPWMのONがあると、ほぼ最高電圧になってしまうということです。
機関車等には負荷がありますので無負荷でモータを回すのとは違うと思いますが、調子の良い駆動系ではほとんど無負荷に近いと思われるので、PWMでの制御がうまくできないのだと考えます。
RE16PWM.jpgRE16PWM負荷.jpg
これは、maxonのコアレスモータRE16でのPWMの波形です。
左は無負荷時で、PWMのONの期間は全体の数分の一ですが、全体の電圧はほぼ最高電圧になっています。
モータの回転数は、供給電源の平均電圧に比例するため、ほぼ最大回転数となります。
右はモータに負荷をかけてほとんど回っていない時の電圧です。
PWMのONの時だけ電圧が出ています。
SE15PWM.jpgSE15PWM負荷.jpg
 これは、ミネベアのSE15を接続した時のPWMの電圧波形です。
左は無負荷時ですが、コアレスモータと違い、逆起電圧の電圧は低く、PWMのON時とOFF時の電圧がかなり違います。
右はモータに負荷をかけてほとんど回っていない時の電圧です。
KATOGM-3.jpgKATOGM-3PWM負荷.jpg 
 これは、KATOのGM-3を接続した時のPWMの電圧波形です。
左は無負荷時で、モータにはフライホイールが付いていますが逆起電圧の電圧は低く、PWMのON時とOFF時の電圧がかなり違います。
右はモータに負荷をかけてほとんど回っていない時の電圧です。
posted by よしひろ at 16:03| Comment(0) | TrackBack(0) | 電子工作

2022年06月01日

牽引力測定車作製2

牽引力測定のプログラムはとりあえず動くようになったので、測定車輛の製作に取りかかりました。
16.5mm用と12mm用を作製するつもりです。
元々は車輛は共用で、台車を取り替えれば良いと思っていたのですが、台車の枕梁の高さが異なっており、台車を変えると連結器の高さも調整する必要があるため、別々に作ることにしました。
牽引力測定車.jpg
測定車本体は木の板に台車を取付けたものです。
この板の上に回路基板を並べていく予定です。
この写真は16.5mmゲージ用です。
ロードセル.jpg
ロードセルはこのように取付けました。
ゆうえんこうじさんから教えていただいたこのサイトの作成例ではロードセルを斜めに置いて、カプラーに繋がったリンクを動かして力を伝える仕組みです。
カプラーから何かを介してセンサーに力を伝えるとなると、そのリンク等を動かすために負荷が発生し、測定誤差に繋がることが懸念されます。
特に小さな物においては、途中の機構の負荷が無視できない場合が多いと思います。
そこで、私は、直接連結器をロードセルに取付け、なるべく余計な仲介物を無くすようにしました。
レール上面からロードセル上面までは約42mmですので、客車等の中に収めてしまうことも可能かもしれません。

以前から使用している市販のフォースゲージを使用した牽引力測定車でもフォースゲージの入力部に連結器を付け、直接力が測定器に伝わるようにしています。
タグ:測定 牽引力
posted by よしひろ at 23:59| Comment(0) | TrackBack(0) | 電子工作

2022年05月31日

牽引力測定車作製

ゆうえんこうじさんからマイコン開発ボードやツールについて教えていただき、真似をして牽引力測定車を作成中です。
元々使用している牽引力測定車は市販のフォースゲージをそのまま使用している関係で、幅が広くて複線で走らせるともう一方は通行止めになってしまいます。なので、普通の車輛程度の大きさのものが欲しかったのです。
センサーは100gが測定できるロードセルですが、実際に使ってみると300g近くまで測れるようです。
(大きな値の時は誤差が大きいかもしれません)

ここ数年はマイコンのプログラムも作ったことがなかったのですが、結構便利なものが販売されているようです。
ソフトとハード双方を製作すると、問題があった時にどちらが悪いのかを確認するのも大変ですので、今回は極力市販のハードウェアをそのまま使用し、回路の半田付けは避けることにし、プログラムも既にあるライブラリをできる限り使用することにしました。
牽引力測定.jpg約一週間かかって力を検出し、それをOLEDに表示、bluetoothで値を伝送するというところまではできるようになりました。
初めて使用する開発ツールで何が何だか分かりませんでしたので、入門書を読んでやっとここまできました。
高々400行に満たないプログラム作製に一週間も要するのは遅すぎかもしれませんが、ハード毎に便利なライブラリが揃っていているので、慣れれば色々なことが早くできるのかもしれません。

開発中には色々問題も発生しその解決に数日を要したりもしました。
・夜に作業を終了、PCをシャットダウンして、昼に作業を再開しようとしたらPCでCOMポートが見えなくなり、作業ができなくなった。
 →PCのドライバの再インストール(上書き)、ドライバを削除しインストール、PCの再起動等、何時間もかけて色々やってみましたが、結局USBケーブルを変えたら直りました。今回購入したケーブルなんですけどね。

・開発ツールのコンパイルが異常に遅い
8086CPUでコンパイルしていた時よりも遅い感じでした。
負荷状況を確認したら、セキュリティソフトが怪しいと思い停止してみると、コンパイル時間が数分の1に低減しました。
元々、変更の無いプログラムも毎度コンパイルしているようですので、遅いです。

・OLEDの表示がうまくできなかった
サンプルプログラムをそのまま使用してもOLEDが表示できず、動作時にエラーが出力されていました。
ライブラリ呼び出しの細かいところに何か問題があるのかとか、ハードが悪いのかとも疑ったのですが、試しにボード本体の開発ライブラリのバージョンを下げてみたら、正常に表示されるようになりました。
後で確認したら、OLEDライブラリが古かったようで、全く新しい別のライブラリが登場していました。

タイマ割り込みを使って測定を定期的に実行したいのですが、割り込みで呼ばれた先から他のボードを制御しようとするとプログラムがエラーで落ちてしまうので、あきらめました。
動作していることを示すLEDの点滅だけタイマ割り込みを使っています。
タグ:測定 牽引力
posted by よしひろ at 16:51| Comment(1) | TrackBack(0) | 電子工作